新たな固定資産評価法は「取得価額活用法式」?取引価格の採用は道険し

取引価格を基準とした固定資産税評価法は見送る公算が高い

現在の固定資産評価法は公平性にこだわり過ぎている側面があり、評価に時間も費用も多くを犠牲にしています。加えて、計算ミスや、納税者からの不服申し立てや訴訟も散見され、複雑さゆえの二次コストも発生しています。

そのため、取引価格(建物を取得した実勢価格)を基準として評価を算定する方法など、もっと簡素な方法がないか検討中です。

ダメ・NO・男性_sしかし、東京都主税局の検討会でも第一回の検討会で座長が「再建築費評価法の原則はそのまま残す」という意見を早々に述べ、「大規模なものによっては評価の簡素化を旨とする意味で、取引価格みたいなものも参考にしつつ決定する方法というのはあり得るんではないか」と発言しています。

つまり、税の公平性を担保するため精緻な評価法である再建築費評価法は踏襲した上で、大規模な建物に絞って、あくまで取引価格を補足情報としてうまく活用できないかと提案しているのです。

取引価格を基準とする評価法を検討するには地方税法そのものに変更を加えるといった、よりハイレベルな議論が必要との考えで、今回の検討会ではそこまで踏み込むことは期待できないようです。

投資促進に向け売買価格基準などが簡素だが「公平さ」が壁

税という視点からみた場合、「公平」と「簡素」はいつの時代も議論になるところです。

過去にも、再建築価格のほかに、①取得価格や②賃料などの収益、③売買価格を基準とする固定資産評価法も検討されました。実際に、海外ではこのような方式が採用されている国・地域が複数あります。

しかし、①取得時の個別的な事情による偏差があることや、②種々の事情によりはなはだしい格差があること、③家屋の取引が一般的に宅地とともに行われている現状からして、そのうち家屋の部分を分離することが困難であるなどを理由に、これらの評価法は退けられた過去があります。

no%e3%83%bb%e6%96%ad%e3%82%8b%e3%83%bbxx%e3%83%90%e3%83%84_sこれらを受け、1959~60年度の固定資産評価制度調査会(総理大臣の諮問機関)による評価制度の審議・答申において、「再建築価格を基準として評価する方法(再建築価格方式)によることが適当である」と結論付けられ、現在に至るまで再建築価格方式を使っています。

その他、「広域的比準評価方式」や「㎡単価方式」なども検討されてきた経緯もありますが、同じく種々の理由より断念しています。

あくまで再建築価格方式をベースとした新たな評価法「取得価額活用法式」

現時点の議論において、検討会は「評価額」=「工事原価」×「調整率」×「時点修正率」としたものに、(再建築価格方式と同様)経年劣化など減点補正率で調整する方式を新たな固定資産評価法として提言をまとめる模様です。

長期優良住宅・審査・手・ペン_sこれまでは工事の見積書などから一つ一つの資材の再建築価格を積み上げて評価額を算出していたものを、民間事業者が見積もった実際の工事原価(資材費や労務費)を基準に、上乗せしている利潤を差し引くための調整率を掛けて、物価水準を調整する時点修正率をかけるのです。

つまり、これまでは見積書などから資材をすべてピックアップして、価格は別途、あらかじめ決められているものを使って再建築価格を積み上げていっていたのを、見積書に記載の金額をそのまま使い、それに補正を掛けることで評価額を計算するものです。

今回の検討会ではすぐに大きな影響はない。今後の見直し機運に期待

まだ検討段階であり、また大規模ビルに限った話ですので直ちに大きな影響がでるとは考えれません。

検討会は東京都主税局が主幹しており、「国への情報提供や提言を行う参考にすることなどを予定している」と検討会設置の目的を述べるに留まり、今回の検討結果が全国に展開される性質のものでもありません。あくまで参考情報の提供や提案という形に留まるものです。

information-supplement_provision_sさらに、家屋の固定資産税に限ってみても景気変動による影響が少なく安定的な税収が見込め、2016年度東京都一般会計当初予算によると、都税収入の23%(都市計画税を含めると27%)にも達します。

東京都としても評価方法を軽々しく変えられるものではなく、今回の検討会でいきなり大幅な変更は期待できないといえるでしょう。

古くから続く評価方法を見直そうとする姿勢そのものに意義がある

50年以上にわたり使われてきた固定資産評価方法をいまから変えるには相当の調整が必要となることは容易に想像できます。

今回は、変更するにはあまりにも影響が大きくなりすぎたこの評価方法を見直し始めたことそのものに意義があるといえるでしょう。

都心の風景_s長い目でみれば、大規模ビルにとどまらず、一般住宅にもより簡素で分かりやすい評価法へ移行する可能性も否めません。

現在は、公平性に重きを置きすぎているといえ、バランスの良い評価法に移行し、それが経済の活性化につながることを期待したいですね。

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