【2017年公示地価】住宅地は下げ止まり・商業地上昇。地方も一部急騰

2年連続上昇。住宅地は9年ぶりプラ転で下げ止まり、商業地は上げ幅拡大

3月21日、国交省が2017年1月1日時点の「公示地価」を発表しました(公示地価を補完する「基準地価」は2016年9月20日に公表されています)。

公示地価は(建物の価値などを考慮せず)更地での土地の価値を、「住宅地」「商業地」「工業地」など土地の用途ごとに分け評価します。地価調査時点は約26,000地点でした。

2017年の公示地価の変動率は、全用途で全国平均が2年連続上昇、緩やかな回復基調であることを示した結果となっています。

地域
( )は前年2016年値
全用途住宅地商業地
全国+0.4%
(+0.1%)
+0.022%
(▲0.2%)
+1.4%
(+0.9%)
三大都市圏平均+1.1%
(+1.1%)
+0.5%
(+0.5%)
+3.3%
(+2.9%)
東京圏+1.3%
(+1.1%)
+0.7%
(+0.6%)
+3.1%
(+2.7%)
大阪圏+0.9%
(+0.8%)
+0.0%
(+0.1%)
+4.1%
(+3.3%)
名古屋圏+1.1%
(+1.3%)
+0.6%
(+0.8%)
+2.5%
(+2.7%)
地方圏平均▲0.3%
(▲0.7%)
▲0.4%
(▲0.7%)
▲0.1%
(▲0.5%)
中核4都市
※札幌・仙台
広島・福岡
+3.9%
(+3.2%)
+2.8%
(+2.3%)
+6.9%
(+5.7%)

住宅地では、前年2016年の▲0.2%から+0.022%へと9年ぶりにプラスへ転じ、下げ止まった格好です。空前の低金利や、住宅ローン減税(控除)などによりマイホーム購入の需要が根強く推移したことなどが原因です。

商業地では旺盛な訪日外国人旅行客の需要などで、ホテルや店舗の進出が活況、プラスが2年連続でその上げ幅も拡大しました。

工業地は底堅く推移、プラスに転じています。首都圏中央連絡自動車道(圏央道)や東京外郭環状道路(外環道)など高速道路IC周辺に近接したエリアは、大型物流施設の用地としてニーズが高く上昇が顕著です。上昇率トップは埼玉県入間市の工業団地で+10.3%です。

東京圏は好調、大阪圏の住宅地・名古屋圏は上げ幅が縮小。地方の中核都市は活況

三大都市圏別にみると、東京圏は住宅地・商業地ともに上げ幅を拡大しています。

一方で、大阪圏の住宅地や名古屋圏の住宅地・商業地は共にプラスとなったものの、2016年と比べるとその上昇幅を縮小していることが分かります。

また、地方圏は全体の平均値としてはマイナスではあるものの、下落幅を縮小しています。

特に、中核の4都市は上げ基調を強めており、三大都市圏を上回る上昇の勢いをみせています。地方にも地価上昇が波及していることがうかがえます。

尚、住宅地・商業地ともに上昇したのは、9道県(宮城県・福島県・埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県・愛知県・広島県・福岡県・沖縄県)となり、前年の8道県から広島県が追加、その数を拡大させました。

住宅地は横ばい。街の中心部に住む動きが加速、立地が選別・二極化へ

全国の住宅地は、前年比+0.022%と9年ぶりに地価が下げ止まった状況です。

前年の▲0.2%からわずかながらプラス圏へ戻し、リーマン・ショック直前の2008年以来のプラス(上昇)に転じた格好です。

景気の緩やかな回復や、低金利で住宅ローンが組みやすくなったこと、ローン減税などによって実質的に住宅が安く買うことが可能となり土地活用が促進されたものとしています(国交省)。

下げ止まったとはいえ、ほぼ横ばいの状況でありその勢いはまだ弱いともいえます。全体平均としてはプラスに転じたものの、個別具体的にみれば立地の利便性により地価が上昇したエリアと下落したエリアが二極化された結果となっています。

コンパクトシティ+ネットワーク立地適正化計画など、人を集約して住まわせる動きが加速しており、立地(場所)によって地価の上昇・下落が顕著に分かれた結果となっています。

東京圏の住宅地は4年連続プラス、東京23区は全域上昇。高値への警戒感も広がる

住宅地上昇率トップ10の内、7地点が仙台となっています。2015年に市営地下鉄東西線が開業し、沿線が新築住宅用地として価値が上昇しています。

堅調に上昇しているのは東京圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県・茨城県の一部)の住宅地で、+0.7%と4年連続のプラスです。

上昇地点は約半分の50%、都内は23区すべてが上昇しています。尚、都内の上昇率トップ10の内、9地点が都心3区(千代田区・中央区・港区)が占め+5%以上の伸び率を示しています。

一方、土地の仕入れ価格が急騰し新築マンションが手の届かない価格帯まで押しあがっているなど、高値への警戒感も広がっています。

今後、マンション市況の落ち込みも予想され、地価上昇にブレーキがかかる可能性もあります。

商業地は地価上昇。外国人客急増によって、ホテルや店舗需要が拡大

商業地は全国平均で+1.4%と2年連続のプラスを維持し、前年の+0.9%から上昇幅を拡大(住宅地に比べて)上昇基調が強くなっています。

三大都市圏で+3.3%、中核4市では+6.9%(札幌市+6.1%、仙台市+9.0%、広島市+4.7%、福岡市+8.5%)といずれも上げ基調を強めています。

訪日外国人客が集まる都市を中心として、ホテル用地や店舗需要が旺盛となったことが地価を押し上げる結果となっています。

一方で地方圏の平均が▲0.4%と、前年の▲0.7%からマイナス幅は7年連続で縮めたものの下げ止まるには至っておらず、25年連続で下がり続けています。

尚、▲2%以上下落した都道府県は、前年の9県(青森県・秋田県・新潟県・鳥取県・島根県・愛媛県・佐賀県・宮崎県・鹿児島県)から、4県(新潟県・新潟県・鳥取県・鹿児島県)に減少しています。

大阪府が上昇率トップ5を独占。東京は銀座が地価高額地点トップ4独占、上昇続く

大阪府は商業地の上昇率トップ5を独占、都道府県別上昇率でも2年連続首位となっています。

訪日客の急増によって、ホテルや店舗の出店需要が急騰しており、大阪市では+9.0%、中央区道頓堀1丁目では+41.3%もの高い伸び率を示すほどです。大阪圏(大阪府全域・兵庫県・京都府・奈良県の一部)でみても、+4.1%の上昇、4年連続の上昇です。

東京圏でも、商業地は+3.1%と4年連続で前年を上回っています。港区の虎ノ門や幹線道路の環状2号線など、交通インフラ整備や再開発が進んでいることに加え、やはり訪日客の増加などが主因です。

東京都内でみると都内23区すべてが上昇、そのなかでも中央区は+9.8%など、内10区は+5%以上の上げ幅を示しています。

都内の商業地上昇率トップ10の内、7地点を銀座が占め+20%~+30%の高い伸びを示しています。額でみれば地価高額地点トップ4を銀座が独占しています。

今後は地価下落?2018年から始まる東京都心の「オフィスビル大量供給」リスク

東京圏は、住宅地も商業地も共に上昇しており、その上げ幅も拡大しています(大阪圏は、商業地が好調である一方、住宅地は横ばいと明暗が分かれる格好となりました)。

住宅地は特にマンション用地が急騰しており今後、その反動で相場が崩れる可能性があります。商業地も、2018年から2020年にかけて都心のオフィス大型ビルが相次いで竣工する見通しです。

今後オフィスが供給過多となった場合には、賃料の下落に伴い、地価が下落していくことも十分考えられます。

地価が上昇する地点が二分化されている傾向にある反動で、利便性の高い地域に不動産の資金が集中して流れている側面もあります。

今後右肩上がりで地価が上昇することは考えにくく、どこかで調整局面が訪れるでしょう。

人手不足やイベント性ある土地が上昇、40%の地点は下落。脆さもはらむ

国交省によると、地価が上昇した地域の特徴として、交通インフラの整備・再開発事業等の進展、高度商業地などにおける店舗需要の高まり、大規模物流施設の立地需要の高まり、観光・リゾート需要の高まりなどをあげています。

これは、「人」と「カネ」が集まるエリアともいえます。人が集まる場所や人手が不足している(人材ニーズが高い)場所、不動産投資信託(REIT)や賃貸アパート・マンション融資が高まっているエリア、インフラ整備といった再開発地域などです。

例えば、交通インフラの整備でいえば2015年12月に開業した札幌市の市電延伸(路面電車のループ化)や仙台市営地下鉄東西線によって、沿線地域の利便性が向上した札幌市や仙台市では+10%超の高い伸び率を示した地域があります。

また、人が集まるエリアとして人口が増加している沖縄県の住宅地や、訪日外国人旅行客が増加した大阪、人手不足による建築費増加で新築マンションが価格高騰した都心部、高機能物流施設の用地ニーズの高まった埼玉県があげられます。

このようなイベント性のある土地のニーズが上昇し地価を押し上げているものの、一過性である危険性もはらみます。

例えば上述した通り、都心の新築マンションの高止まりによって在庫が積みあがっており、今後マンション価格が値下がりするとともに土地も下がっていく可能性があります。地方の賃貸アパート融資も渋り始めており、地方の土地ニーズも減退していくかもしれません。

一斉に値上がりしたバブル期とは状況が異なる。今後、住む場所の選別が強まる?

また、今後はさらに立地によって地価が二分化されていくでしょう。

今回は全国の地価上昇率は+0.4%(内、住宅地0.0%・商業地+1.4%)となりましたが、その中身を見ていくと上昇した地域と下落した地域に大きく分かれた結果がプラスマイナスゼロ~やや上昇となったイメージです。

具体的には、都道府県別の変動率と地点数によると、住宅地を調査した17,909地点の内、上昇した地点6,082(約34%)・横ばい4,067(約23%)、下落7,760(約43%)です。

商業地でも同様に合計6,142地点の内、上昇2,874(約47%)・横ばい1,034(約17%)・下落が2,234(約36%)です。

時期バブル期
(1988年)
ミニバブル期
(2008年)
2017年
全国の地価上昇率+21.7%+1.7%+0.4%
上昇地点数の割合85%47%37%
住宅地(東京23区)の平均価格136万円/㎡58万円/㎡55万円/㎡

下落している地点が依然約4割を占めており、両者を合わせると上昇したのはわずか「37%」です。全国的に上昇し調査地点の85%が上昇(下落3%)のバブル期(1988年)とは大きく様子が異なることがわかります。

これからますます立地の選別化が進むと考えられます。今後も地価動向に注目していきましょう!

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