目次
譲渡所得税の額(計算方法)
譲渡所得税とは、不動産を売却した時に得られる利益(譲渡所得)に課される所得税および住民税です。売却益が出ない場合には課税されません。
また、譲渡所得は、給与所得など他の所得とは切り離されて税金の額が計算される分離課税方式で計算します(他の所得と独立して計算します)。
計算式は以下の通りですが、それぞれの項目について後述します。
譲渡所得税=(収入金額-取得費-譲渡費用-特別控除)×税率(所得税・住民税)
イメージとしては、売却代金から、その不動産を取得するのにかかった費用と売却する時に要した費用を引いたものを利益ととらえます。それに所得税と住民税を合わせた税率が掛けられます。
以下で、一つ一つの項目について詳しくみていきましょう。
収入金額(売却金額+固都税の清算金)
収入金額は以下の通りです。不動産(土地・建物)売却時に買主からもらう売却金額に加えて、固都税の清算金を按分した場合にはそれも収入に含めます。
収入金額=売却代金+固都税の清算金
本来、固都税は1月1日時点で不動産を所有していた売主が全額負担すべき性質のものです。
それを買主との間で按分したとしても、買主が代わりに固都税を納めるわけではなく、清算金は売買代金の一部とみなされるためです。
また、買主が売却代金の支払いを遅延した場合など、売却した年に実際にキャッシュを手に入れていなくとも、未収金部分も含め、売却代金が収入金額に計上されます。
取得費(実額取得費と概算取得費の大きい方)
取得費は、実際の費用を積み上げて計算した実額取得費(実額法)と、実費が分からない場合などに概算で算出する概算取得費の2つがあります。
どちらか大きい方を採用できます(納税者に有利な方式です)。
実額取得費(実額法)の計算方法
実額取得費のイメージとは、土地・建物の購入金額と、その後に改良した(不動産の価値を上げた)費用を足し合わせ、最後に建物の劣化分を引くものです。
具体的には以下のように計算されます。
実額取得費=取得に要した費用+改良費用-建物の減価償却費
ここで、取得に要した費用と改良費用(消費税込みの金額)の具体例は以下の通りです。
これらは原則として、領収書や契約書などの書面で確認しますので購入時にきちんと保管しておきましょう。
費用の種類 | 具体例 |
---|---|
取得に要した費用 |
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改良費用 |
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尚、所得に要した費用にならないものには「ローン金利・保証料」「団体信用生命保険料・火災保険料」「管理費・修繕積立金」などがあります。取得費用に含めない代わりに、毎年の確定申告で所得税などが減額されているためです。
建物の減価償却費は以下の式で算出されます。
【旧定額法】減価償却費(合計)=建物の取得価額×0.9×償却率×経過年数
償却率は以下の表によって、建物の構造によって求められます。
構造 | 非事業用 (マイホームやセカンドハウス) | 事業用 (居住用の賃貸マンションなど) | |||
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耐用年数 (事業用の1.5倍) | 償却率 (≒1÷耐用年数) | 耐用年数 | 償却率 (≒1÷耐用年数) | ||
木造 | 33年 | 0.031 | 22年 | 0.046 | |
軽量鉄骨 | 骨格材の肉厚≦3mm | 28年 | 0.036 | 19年 | 0.052 |
3mm<骨格材の肉厚≦4mm | 40年 | 0.025 | 27年 | 0.037 | |
4mm<骨格材の肉厚 | 51年 | 0.020 | 34年 | 0.030 | |
(鉄骨)鉄筋コンクリート | 70年 | 0.015 | 47年 | 0.022 |
尚、経過年数は5捨6入します。つまり、6カ月未満の年は切り捨て、6カ月以上経過している年は切り上げます。例えば5年8カ月経過した建物は6年経過したと考え、5年5カ月しか経過していない建物は5年とみなして計算します。
また、この旧定額法では、減価償却費(合計)が建物の取得価額の95%までに達すると(建物の価値が元々の価値の5%になると)、その後は5年かけて建物価格が1円となるまで減価償却します。つまり、最終的には建物価値が1円となります。
減価償却費の意味や詳細は以下をご参考ください。
概算取得費(概算法)の計算方法
概算取得費は、その名の通り、概算で取得費を計算します。
古い不動産や、購入した当時の領収書などを紛失してしまった場合に、以下の計算式を用いて取得費を計算します。
概算取得費=収入金額×5%
つまり、たった5%しか取得費として認めてもらえず、ほとんどの場合に実額取得費よりかなり小さな値になります(譲渡所得税が大きくなります)。
これは、先祖代々受け継いできた場合などを想定していると考えられ、大昔の貨幣価値では確かに5%相当額が妥当な水準だという国の主張が聞こえてきそうです。
もし「十数年前に購入したばかりなのに、領収書を紛失してしまった」などの場合には、売主への送金明細や通帳の記帳、住宅ローンの契約(金銭消費貸借契約)、登記簿謄本の抵当権設定額などで合理的に取得額を示すことができれば通用する場合があります。
不動産会社からもらったパンフレットやマイソク(広告図面)、論理的な推定計算などは証明書としては効力が弱いと考えられますが、最終的には税務署が判断することになります。まずは落ち着いて状況証拠を整理しましょう。
一番大切なことは、大切な契約書や領収書はしっかりと保管することです!
譲渡費用(売却に要した費用)の計算方法
譲渡費用とは、不動産を売却する際に要した費用です。具体的には以下などです。
譲渡費用の具体例 |
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仲介手数料や支払った税金は理解しやすいと思います。
売却に関わる費用としては、表にある通り、売却のための取り壊し費用や、借家人に退去してもらうために支払った立ち退き料も売却のためであれば費用に含められます。
借地権を売却する時に地主の承諾をもらうための名義書き換え料や、より高い金額で売却するために、初めの買主との契約を破棄した時に支払った違約金なども、売却に直接関わるものとされ費用に計上できます。
しかし、売却に直接要する費用ですので、抵当権抹消費用や固定資産税や都市計画税、通常の(売却価格を増加させない)不動産の維持管理費などは譲渡費用に含まれません。
また、売却後の費用、例えば売却代金の取立費用も費用となりません。
特別控除(マイホームを売却すると3,000万円控除される)
譲渡所得の特別控除は、一定の要件を満たす不動産を譲渡(売却)した場合に、税を軽減するものです。
特に、マイホーム(居住用財産)を売却した場合の3,000万円の特別控除の特例は必見です。
特例の分類 | 特例の対象 | 特別控除額 |
---|---|---|
居住用財産 | マイホームを売却 | ▲3,000万円 |
取得時期 | 2009~2010年に取得した土地を売却 | ▲1,000万円 |
公共事業など による収容 |
| ▲5,000万円 ▲2,000万円 ▲1,500万円 ▲800万円 |
また、特別控除額の最高限度額は年間の譲渡所得全体を通じて5,000万円です。
【適用要件】マイホーム(居住用財産)を売却した場合の3,000万円の特別控除
マイホームを売った場合の特例要件は、以下を満たすことが要件です。
特にその他特例を受けておらず、現在住んでいるマイホームをそのまま第三者へ売却する場合には適用されます。
項目 | 適用要件 |
---|---|
対象不動産 | 売却する不動産が主として居住しているマイホーム(自宅)であること |
併用不可の特例 |
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売却先の条件 |
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以前に住んでいたマイホームの場合 | 住まなくなった日から3年目の年の年末(12月31日)までに売ること |
建物(家屋)を取り壊した場合 |
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居住日については、実際に住み始めた日を原則としますが住民票の異動日となる場合もあります。判断に迷う場合には税理士などの専門家や税務署へ相談しましょう。
尚、この特例を受けることだけを目的として入居したと認められる場合や、マイホームを新築する間だけ仮住まいとして購入した建物など一時的な目的で入居したと認められる建物、別荘や娯楽・保養のための建物には適用されません。
【適用要件】2009~2010年に取得した土地を売却した場合の1,000万円の特別控除
2009~2010年に取得した土地の売却特例の適用要件は以下の通りです。
以下の要件にある通り、マイホームを売却した場合の3,000万円の特別控除の特例とは併用できません。
項目 | 適用要件 |
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対象不動産 |
|
併用不可の特例 |
|
売却先の条件 |
|
2009~2010年という限定した年の土地のみに特例を設けている理由は、不動産流通を活発化させ景気回復を促進させるべく2009年度税制改革に盛り込まれたものだからです。
この時期は世界的な金融危機の後遺症から日本も厳しい経済状況であり、景気回復期間中に取得した土地に限って、その譲渡所得税を軽減したのですね。
売却損が出た場合にも特例あり(居住用不動産に限る)
課税譲渡所得がマイナスになる場合、つまり売却損が発生する場合には、以下の特例が設けられています。
これによって、他の所得と損益通算ができたり、翌年以降3年にわたりその他の所得から控除できたりします。
税率(短期と長期で倍も違う)
譲渡所得税は、その課税譲渡所得(=収入金額-取得費-譲渡費用-特別控除)に対して(所得税率と住民税率を足し合わせた)税率が掛け合わされ、その税額が算出されます。そして長く住んでから売却した方がお得になります。
課税譲渡所得は、その不動産の所有期間が5年以内か5年を超えるかによって「短期譲渡所得」と「長期譲渡所得」に分けられ、その税率が約2倍も異なるためです。さらに10年を超えて所有するマイホームを売ったときの軽減税率の特例もあります。
分類項目 | 短期譲渡 | 長期譲渡 | ||
---|---|---|---|---|
所有期間 | 5年以下 | 5年超 | 10年超 | |
税率 | 居住用 | 39.63% | 20.315% | 14.21% ※課税譲渡所得6,000万円超の部分は20.315% |
非居住用 | 20.315% |
所得税率と住民税率の内訳を表示すると、それぞれ39.63%(=所得税30.63%+住民税9%)、20.315%(=所得税15.315%+住民税5%)、14.21%(=所得税10.21%+住民税4%)となります。
5年間の判定方法に注意!カレンダー通りではなく「1月1日」が基準
不動産の所有期間の判定においては、取得した日から譲渡した日までの期間をカレンダー通りに計算するのではありません。
譲渡した日の属する年の1月1日現在までの所有期間で判定することにご注意ください。
例えば、2010年6月1日に取得し、5年を超えた2015年6月15日に売却したとします。
しかし、売却した日の属する年の1月1日、つまり2015年1月1日時点で判定すると、4年7カ月しか経っておらず短期譲渡とみなされるのです。
尚、取得日や譲渡日については、原則、不動産の引渡日や登記申請書類の引渡日ですが中古住宅の場合には契約効力発生日とできる場合もあります。長期譲渡と短期譲渡の判断が微妙な場合は専門家や税務署に相談しましょう。
【適用要件】10年超所有のマイホームを売ったときの軽減税率の特例
マイホームを売ったときの軽減税率は以下を満たすことが要件です。
これは、マイホームを売却した場合の3,000万円の特別控除と併用することができます。
項目 | 適用要件 |
---|---|
対象不動産 |
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併用不可の特例 |
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売却先の条件 |
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以前に住んでいたマイホームの場合 | 住まなくなった日から3年目の年の年末(12月31日)までに売ること |
建物(家屋)を取り壊した場合 |
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所得税が中途半端な税率になっているのは復興特別所得税の影響
2011年に起こった東日本大震災の被災者救援の財源確保を目的に、「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法」が、2011年12月2日に公布・施行されました。
これいによって所得税×2.1%相当額を復興特別所得税として納める必要があり、この部分が税率に含められているため例えば所得税30.63%などと中途半端になっています。(住民税は均等割り部分が若干増税されています)。
上の表では復興特別所得税を含めて表示していますが、この影響を除くと所得税部分の譲渡所得税率は30%(=30.63%÷(1+0.021))、15%(=15.315%÷(1+0.021))などとなります。
譲渡所得税のまとめ
譲渡所得税は、売却金額から、購入に使った費用や売却に関わる費用を引き、さらに特別控除を減じた残りの利益に税金がかかるものです。
税率も、所有期間が5年以下か5年超かによって大きく変わります。
マイホームであれば、課税譲渡所得が3,000万円も特別控除されたり、所有期間が10年超であればさらに税率が軽減されます。
長期か短期かという判定や、特例要件の判定には難しいところもあり、迷ったら税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
【P.S.】「この家、買っていいのかな?」…迷わずご相談ください!
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