戸建て住宅の不動産鑑定も、建物の性能やリフォームを適正評価へ

2015年7月末に国交省は「既存住宅の評価に関する留意点」を策定・公表しています。これに応じて、日本不動産鑑定士協会連合会は、中古(既存)の戸建住宅の評価を行うために実務的観点から「『既存戸建て住宅の評価に関する留意点』にかかる研究報告」を発表しています。

戸建ての既存住宅を売買する際、金融機関評価では税法で用いられる法定耐用年数などを流用して、築後20~25年程度経過すれば建物評価を一律にゼロとする慣習があります。

これでは、リフォーム・リノベーションしたり増改築を行って建物の性能を向上させるインセンティブが働かず、老朽化住宅をメンテナンスせず放置されてしまいます。また、中古住宅流通が促進されません。

そこで、建物の性能やリフォームをしっかり加味して実際の建物状況に即した評価を行うよう促しているのです。

耐用年数の方法と観察減価法の併用で、実態に即して評価する

戸建て住宅を「建て直したらいくらかかるか(再調達価格)」という原価法によって評価する場合を考えます。

鑑定評価の詳細は割愛しますが、価値を減少(減価)させる要因について「物理的要因」「機能的要因」「経済的要因」にわけ、それぞれ以下のような項目に注目します。

減価の要因種別 戸建住宅に関する主な減価の要因(例)
物理的要因
  • 基礎・躯体にかかる蟻害・腐朽、腐食など
  • 外部仕上にかかる屋根・外壁の仕上げ材のひび割れ、欠損など
  • 内部仕上にかかる内壁・天井・床の仕上材の剥がれ、染みなど
  • 設備にかかる設備機器の故障、給排水管の水漏れなど
機能的要因
(不動産の機能的陳腐化)
  • 建物の性能不足(耐震性、耐火性、断熱性等)
  • デザイン・間取りの陳腐化
  • 建物と敷地との不適応(建物の配置不良)
経済的要因
(外部的要因による
不動産の経済的不適応)
  • 周辺環境との不適合
  • 代替、競争などの関係にある不動産との比較における市場性の減退

これらに基づいて実地調査などを行い、建物の劣化状況を把握し、不動産の個別要因を反映して直接現在の価値を求める「観察原価法」に基づき現在の建物価値を評価します。

また、時間の経過に伴って建物が劣化していくような価値の減少は、外部からの観察からでは把握しきれません。そのため、時間軸に着目して耐用年数を増減させることによる耐用年数に基づく評価法も併用して不動産を評価します。

住宅の性能によって、経済的残存耐用年数を適正に把握する

法定耐用年数によった画一的な評価であれば、築後25年程度で「建物評価ゼロ」とされてきました。

国は、長期優良住宅など超長期で使っていくことを前提とした耐久性の高い住宅の認定制度も開始しており、質の高い住宅も同じように評価されるのは合理性に欠けてしまいます。

基礎・躯体の物理的要因による減価のイメージ(国土交通省:原価法の適用における留意点のポイント

そこで、住宅性能評価書や長期優良住宅認定通知書など、住宅の性能がわかる書類などに基づいて、建物の初期性能と維持管理の状態を的確に把握、良質な住宅はそれだけ(経済的な価値が何年あるかを示す)経済耐用年数を伸ばしていく考えをとります。

逆に、耐久性の劣る住宅はそれだけ短くなるのです。実態に即した不動産評価を行おうとするものですね。

リフォームや設備取り換えして価値が回復したものを評価に反映する

リフォームや設備取り換えなど、適切なメンテナンスをすれば建物の価値は一般的にあがります。

設備等の取替部分のみで見た場合(国土交通省:原価法の適用における留意点のポイント

それを適切に評価に反映すべく、修繕内容によって再調達原価を増額したり、経過年数を再スタートさせたり、経済的残存耐用年数を延長することで実態に即した評価に近づきます。

中古戸建住宅の積算価格査定システム「JAREA HAS(ジャリアハス)」

日本不動産鑑定士協会連合会は、これらの評価方法に沿った積算価格を算出する不動産鑑定士の評価支援システム「JAREA HAS(Japan Association of Real Estate Appraisers House Appraisal System:既存戸建住宅建物積算価格査定システム)」も開発しています。

設計事務所や工務店などから収集した戸建て住宅の原価データ(一般財団法人建設物価調査会の再調達原価査定システム(JBCI))を組み込み、住宅性能やリフォーム状況などを適切に反映した制度の高い再調達価格を算出します。

リフォームによる価値回復や、耐用年数のリセットなどが反映されるシステムです。建物全体の基本情報や部位ごとの品質などを入力することで、基礎、躯体、屋根、内部仕上げなど11部位に分けて部位ごとに再調達原価の把握を行います。

JAREA HASは、インスペクションなどを基に適正価格をワンストップで算定する「住宅ファイル制度」とともに、自民党の「中古住宅市場活性化に向けた提言」に盛り込まれ『「20年で一律価値ゼロ」とみなす市場慣行の抜本的改善』に向け、期待が込められています。

「既存住宅価格査定マニュアル」も改定。不動産会社による評価を支援

2015年7月末には公益財団法人不動産流通推進センターが「既存住宅価格査定マニュアル」も改訂しています。

これは、国交省が2014年3月に、住宅性能やリフォームの状況などを的確に反映した評価がなされるよう「中古戸建て住宅に係る建物評価の改善に向けた指針」を策定したことを受けたものです。

リフォームの有無による価値向上の違い(公益財団法人 不動産流通推進センター)

価格査定マニュアルは、不動産業者(宅建業者)が個々の不動産の状況に応じた適切な評価額を算定するツールです。

顧客に対して、「どうしてその価格になるのか?」といった算定根拠を示す際に合理的な根拠を示しやすくする査定ツールともいえます。

個々の住宅関連制度が整ってきた現在。本格普及はこれから?

住宅ローン審査など実際の売買の局面において、鑑定士に不動産評価を依頼したりこれら指針に則って評価することは少ないのが現状です。

また、発生するコストや業務プロセス変更の難しさなどから、不動産会社による評価においても価格査定マニュアルが本格的に普及しているともいえません。

ただ、これらのシステムが整備されてきたことの背景には、住宅性能表示制度や認定住宅制度インスペクション・ガイドラインの策定、住宅履歴の蓄積などといった不動産にまつわる個々の制度が整備されてきたことがあります。

国交省や不動産鑑定士協会が積極的に評価の留意点などを発信することで徐々に浸透し、これら制度が本格進展と相まって、今後評価法も大きく変わる可能性は十分あります。

 

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