取り壊した上で新たに住宅を建てるのは、わずか12戸に1戸(2015年度)

2017年2月28日、国交省は2015年度の「住宅着工統計による再建築状況の概要」を発表しました。再建築率が史上最低を更新、「8.4%」にまで下がりました。

結論からいえば、住宅を取り壊さずに建てる傾向が顕著で、取り壊して建てる場合でも元より多くの住戸を作る、しかも貸家(賃貸アパート・マンション)が急増している状況が続いています。

まずは用語の定義をしておきます。再建築」とは、中古住宅を取り壊し(除却し)、新たに住宅を建て直すことをいいます。

尚、事務所や工場などの建物を壊して住宅を建てる場合や、住宅を取り壊した後すぐに新たな建物を着工しない場合は再建築には含めません。あくまでも、住宅を除却してすぐ(※)に住宅を建てることを指します。

また、「再建築率」とは、再建築した戸数がすべての新築住宅着工戸数に占める割合を指します。つまり、新たに建てられた住宅戸数の内、既存の住宅を壊して建てた戸数がどれくらいあるのかを表します。

(※「すぐ」の定義について、国交省によると除却から再建築までの期間で区切っているものではなく、建築工事届において除却と着工の両方が記載されているものを再建築に含めるとのことです。)

既に2013年に空き家率は「13.5%」、7~8戸に1戸は空室。それでも古い家を放置

今から20年前の1996年度には「21.5%」あった再建築率が、年々下落、2015年度には「8.4%」にまで落ち込んでいるのです。

中古住宅を取り壊して再建築した住戸は、わずか約12戸に1戸ということです。

(※取り壊した後に新築したとしても、“すぐ”に再建築しない限りカウントされません。12戸に1戸という割合が実態をそのまま表しているとは言い切れませんが、少なくとも過去との比較において再建築率は下落していることは注目に値するでしょう。)

仮に再建築率が100%であっても空き家の数も率も上昇していくことが予想される中、ほとんどの古い家をそのままにして新しく家を建てていることを意味しています。

尚、総務省が2013年に発表した日本の空き家数は820万戸、空き家率は13.5%です。既に7~8戸につき1戸が空室です。

(外国人の移民が大きく増加するなどがない限り)日本は人口が減少していくことはほぼ既定路線となっている中、空き家増加を抑えることが急務となっています。

分譲住宅の再建築率が低い。土地の需要が高い首都圏は取り壊されている

2015年度の新設住宅着工戸数「約92万戸」の内訳は、持家(建築主が自ら居住する住宅)が約28.4万戸、貸家(賃貸アパート・マンション)が約38.4万戸、分譲住宅が約24.6万戸、その他0.6万戸です。

再建築率でみると、すべての総合計では「8.4%」ですが、その内訳は、持ち家が「11.9%」、貸家が「10.4%」となんとか10%超を保つのに対して、戸数の約27%を占める分譲住宅の再建築率はわずか「1.4%」です。

全国47都道府県の内、40道府県がゼロ%台です。

用地取得の難しさなどから、販売目的で建てられる分譲住宅は余った土地に建設されていることがわかります(尚、分譲住宅の場合、除却から着工まで時間を要することもあり、統計上の再建築の定義から外れた住戸もあると考えられます)。

地域別でみても、すべての圏内で前年度より再建築率が低下しており、このままでは空き家の増加に拍車がかかってしまうことになります。

地域
※( )は前年度
新設住宅着工戸数
(戸)
再建築後
(戸)
再建築率
首都圏 318,142
(309,191)
36,826
(37,427)
11.6%
(12.1%)
中部圏 104,625
(99,112)
9,456
(9,288)
9.0%
(9.4%)
近畿圏 138,247
(133,118)
8,448
(8,974)
6.1%
(6.7%)
その他 359,523
(339,049)
22,972
(24,012)
6.4%
(7.1%)
全国 920,537
(880,470)
77,702
(79,701)
8.4%
(9.1%)

より具体的にみると、2015年度は首都圏が11.6%(2014年度は12.1%)、中部圏が9.0%(同9.4%)、近畿圏は6.1%(同6.7%)です。(土地の需要が高い)首都圏ほど、家を取り壊している状況が分かります。

取り壊す前よりも戸数が1.4倍に。特に賃貸アパート・マンションが急増

取り壊して建てられた住宅に限定して内訳をみても住戸が増えていることが分かります。

具体的には、(再建築するために)除却された住宅戸数は「55,361戸」、その跡地に再建築された戸数は「77,702戸」と、取り壊す前の住戸の「1.4倍」に住戸数が増えているのです。

例えば8戸あるアパート1棟を取り壊し、新たに10戸の新築アパートを立てた場合には、除却した戸数は8戸、再建築戸数は10戸と数え、1.25倍(=10戸÷8戸)に住戸が増えている計算になります。

住宅の種類
※( )は前年度
再建築前
(戸)
再建築後
(戸)
倍率
持家 38,755
(42,266)
33,771
(37,088)
0.87倍
(0.88倍)
貸家(賃貸戸建て・アパート・マンション) 16,182
(15,717)
39,885
(38,914)
2.46倍
(2.48倍)
給与住宅(社宅・官舎など) 424
(918)
647
(675)
1.53倍
(0.74倍)
合計 55,361
(58,901)
77,702
(79,701)
1.40倍
(1.35倍)

特に、取り壊す前も再建築した建物も「貸家」である建物に限定すると「2.46倍」と突出して高くなっています。

平均世帯人数が減少する中、小さな部屋を建築するために住戸数が増えていることが一因です。また、同一敷地で収益を最大化させるために、敷地面積を有効活用して部屋数を増やしていることもあるでしょう。

事実、国交省の住宅着工統計によると、2012年度から新築貸家の1戸当たりの平均床面積は、51㎡(2012年度)から48㎡(2015年度)へと緩やかに減少しています。足元では、特に30㎡以下の狭小アパートが増加しています。

地域別にみれば首都圏が1.67倍と他地域より高い。地方圏でも2.43倍と住戸数を拡大

地域別にみると、首都圏「1.67倍」・中部圏「1.20倍」・近畿圏「1.18倍」・その他地域「1.26倍」と、首都圏は除却した住戸より多くの戸数を確保して新築していることがわかります。

首都圏の持ち家は、0.8倍と全国平均の0.87倍より低い水準です。これは、狭小住宅を防ぐための「敷地面積の最低限度」を定める動きが都内でも広がっていることも一因でしょう。

地域
※( )は前年度
再建築前
(戸)
再建築後
(戸)
倍率
首都圏 22,067
(23,361)
36,826
(37,427)
1.67倍
(1.60倍)
中部圏 7,899
(8,300)
9,456
(9,288)
1.20倍
(1.12倍)
近畿圏 7,181
(7,284)
8,448
(8,974)
1.18倍
(1.23倍)
その他 18,214
(19,956)
22,972
(24,012)
1.26倍
(1.20倍)
合計 55,361
(58,901)
77,702
(79,701)
1.40倍
(1.35倍)

一方で、貸家(賃貸アパート・マンション)は全国平均の「2.46倍」に対して、首都圏「2.84倍」・中部圏「1.81倍」・近畿圏「1.74倍」・その他地域「2.43倍」と首都圏が突出しています。

ファミリー層の居住を促したい豊島区が、30㎡未満の住戸が9戸以上ある共同住宅(アパート・マンション)を建築した業者に、1戸あたり50万円を課税する「ワンルームマンション税」を課すほど、やはり小さな部屋で住戸を増やす動きは根強いものがあるといえます。

さらに注目したいのが、三大都市圏以外の「その他地域」が、中部圏・近畿圏よりもその倍率が高いことです。地方で賃貸アパートを建て替える際、首都圏に次いで住戸を増やしているのです。

古い家を放置、または再建築でも住戸が増加。結果、空き家が増える悪循環

これまでの話をまとめると、古い家屋を取り壊さずに余った土地で住宅を建てる傾向が続いていることがわかります。

増えた住戸の内、今や12戸に11戸は古い家をそのままにしているのです。特に、建設業者が販売目的で建てる分譲住宅は、71戸に1戸(1.4%)しか再建築していません。

さらに取り壊す場合でも以前より多くの住戸を作っており、その中でも賃貸アパート・マンションの戸数が急増しています。いずれも空き家が増加する原因となることがわかります。

住戸が増えることを直ちに否定するわけではありません。都心部など需要が高い地域で住戸数が増えることは、今後人が集まる社会となればそれらが必要となるでしょう。

しかしながら、既に都内でも2013年時点で空き家が約82万戸(空き家率は約11%)、内、約60万戸は賃貸用です。

2008年と比較して10万戸以上も増加しています。需要と供給のバランスが悪化し続けているといえ、業者や賃貸住宅オーナーの供給過多となっている構図があります。

新築するなら劣化住宅を取り壊す。または将来人が居住する需要が見込めるエリアに

国や自治体も、空き家の増加を食い止めようと低品質な中古住宅を取り壊したり、新築する場所を限定したりする政策をとっています。

新たに建物を建てる場合には劣化した物件を取り壊す、または、将来も人が住む(需要が見込める)場所に新築物件を限定することで使い道のある建物を残そうとしています。

その一つが立地適正化計画であり、新築する場所を「居住用同区域」に誘導(限定)しようとしています。

また、住宅ストック循環支援事業においてエコ住宅を建て替える場合も、耐震性がない住宅を取り壊すことを補助金支給の要件としています。

そして、やはり新築が増えすぎた現状を踏まえ、インスペクション法案を可決するなど政府としては優良な中古住宅の流通に力をいれていきたいという想いがあります。

中古住宅の品質が見抜けるようになった今、(新たに建築するのではなく)現存する中古を安く購入して適切にメンテナンスして世代を超えて長く使うという暮らし方が本格化する時期に来ているといえるでしょう。

 

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